宮下朝陽と片山皓心が変えたDeNAのドラフト戦略──「ショートと左腕」から解放された2026年
ここ数年、DeNAのドラフトを考えるうえで、必ずと言っていいほど挙がってきた補強ポイントがありました。
「ショート」と「先発左腕」です。
遊撃はなかなかレギュラーを固定できず、投手陣を見ても先発で計算できる左腕は決して多くありませんでした。
そのためドラフト候補を考える際にも、「ショートを取るべきではないか」「左の先発を増やしたい」という視点がどうしても強くなっていました。
ところが、その状況を一気に変えつつあるのが、昨年のドラフトで指名された2人です。
ドラフト3位の宮下朝陽と、4位の片山皓心。
まさかと言っては失礼かもしれませんが、長年なかなか埋まらなかった二つの補強ポイントに、昨年のドラフトで獲得した選手がここまで綺麗にはまるとは予想していませんでした。
そして、この2人の台頭は2025年ドラフトの成功というだけではありません。
2026年のDeNAが、これまでとは少し違った考え方でドラフトに臨める状況を作ったことに大きな意味があります。
宮下朝陽によって「ショートありき」ではなくなった
まず大きいのが宮下朝陽です。
ルーキーながら一軍で71試合に出場し、打率.258、8本塁打を記録。若い内野手でありながら、一軍で長打も期待できる打撃を見せています。
もちろん、これだけでDeNAの遊撃問題が完全に解決したと断言するのは早いでしょう。
それでも、これまでのように「次のレギュラー候補となるショートを早急に獲得しなければならない」という状況からは大きく変わりました。
宮下が今後も遊撃の中心候補として成長していくのであれば、今年のドラフトで上位指名を使ってまで、同じポジションの選手を優先する必要性は低くなります。
そうなれば、野手についてはショート以外にも目を向けることができます。
その中で注目したいのが外野手です。
外野手を上位で指名する選択肢が現実的に
今年は外野手にも魅力的な候補が揃っています。
特に個人的に注目したいのが、東京ガスの藤澤涼介です。
187センチ、90キロの右打ち外野手で、長打力に加えて50メートル5秒台を記録した俊足も持ち合わせています。社会人で打撃の確実性を高めており、外野手ながら上位指名候補として名前が挙がる存在です。
DeNAには左打ちの外野手が多いだけに、右打ちで長打力と身体能力を兼ね備える藤澤は、現在の編成にも合いやすいタイプです。
そして、もう一人見逃せないのが大阪商業大の春山陽登です。
右打ちの強打者で、大学では長打力を発揮。9月27日にはリーグ通算13本塁打に到達し、大商大OBの佐伯貴弘氏が持っていた関西六大学の最多本塁打記録を更新しました。これは34年ぶりの快挙です。
さらに興味深いのがDeNA側の動きです。
9月22日の大商大戦には、木村洋太球団社長兼チーム統括本部長、長谷川竜也編成部長、八馬幹典アマスカウティンググループリーダーら編成幹部がそろって視察に訪れています。
大商大には左腕の星野世那もいるため、春山だけが目的だったとは断定できませんが、DeNAの藤田スカウトからも春山の飛距離を評価するコメントが出ています。
昨年までなら、「ショートを優先した方がいいのではないか」という考えが先に立っていたかもしれません。
しかし宮下が出てきたことで、藤澤や春山のような純粋に打力や将来性の高い外野手を上位で狙う選択肢がかなり取りやすくなりました。
ほかにも、明治大の榊原七斗は2026年の大学日本代表に選ばれ、ワールドカレッジベースボールチャンピオンシップではMVPを獲得しています。
社会人では王子の柴崎聖人も中堅を守れる外野手として候補に入ります。
「ショートの次を探す」ドラフトではなく、外野を含めて最も魅力のある野手を選べるドラフトになったわけです。
宮下朝陽の台頭によって、今年のDeNAは「ショートを取らなければ」という考え方から少し離れ、外野手を含めて幅広く野手候補を見ることができるようになりました。
そして、昨年のドラフトが今年の指名戦略に与えた影響は、それだけではありません。
もう一人、片山皓心の活躍によって、長年の課題だった「先発左腕」についても見方が大きく変わりつつあります。
ここからは、片山の台頭によってDeNAがなぜ「左腕ありき」ではなく、左右を問わず良い先発投手を狙えるようになったのか。そして今年のドラフトで具体的にどんな投手が候補になり得るのかを考えていきます。