【DeNA】人的補償はなぜ捕手だったのか
──古市尊獲得に透ける編成の合理性
なぜ投手や外野手ではなく、古市尊だったのか。
その選択の裏にある編成の狙いを、チーム事情から読み解く。
横浜DeNAベイスターズは、FAで桑原将志が埼玉西武ライオンズへ移籍したことに伴い、人的補償として古市尊捕手を獲得しました。
事前の予想では投手、もしくは外野手の名前が多く挙がっていただけに、捕手指名という結果に驚いたファンも少なくないでしょう。
しかし、冷静にチーム状況を整理すると、この選択は決して突飛なものではなく、むしろ理にかなった補強だと見えてきます。
本記事では、古市尊捕手が
-
どのような選手か?
-
なぜDeNAは“捕手”を指名したのか?
この2点を中心に考察します。
古市尊はどんな捕手か──育成出身の叩き上げ
古市尊捕手は23歳。独立リーグ出身で、育成契約から支配下を勝ち取った“叩き上げ”の捕手です。
守備力の高い捕手で、2軍では2年連続守備率1.000、盗塁阻止率.400以上という結果を残しています。
打撃面では2025年の2軍成績だと一定数の出場機会を得た中で、打率.276 出塁率.349と安定していて、盗塁できる足も備えています。
古市の最大の特徴は、若さにもかかわらず、すでに1軍で複数試合のスタメンマスクを経験している点にあります。
捕手というポジションの性質上、1軍でスタメンを任されるには、守備・リード・コミュニケーションなど、首脳陣からの一定以上の信頼が不可欠です。
つまり古市は、年齢の割に「実戦経験」がある単なる素材枠ではなく、段階を踏んで育てられてきた捕手という評価ができる選手です。
西武においても、将来を見据えた捕手の一人として、一定の期待をかけられていたと考えてよいでしょう。
DeNA捕手陣の“見えにくい不安”
現在のDeNAの1軍捕手陣は、山本祐大、松尾汐恩、戸柱恭孝の3人が中心です。
この3人については盤石と言って良く、一見すると層は厚く見えますが、問題はその下の世代にあります。
益子京右、東妻純平、九鬼隆平といった捕手はいるものの、彼らは1軍でマスクを被った経験がほとんどありません。
近年のプロ野球では、正捕手1人がフル出場する時代ではなく、複数捕手を使い分ける運用が主流になっています。
その中で、「主力3人の次が、ほぼ1軍未経験」という構造は、将来的に見ると不安材料でもあります。
捕手は“市場に出てこない”ポジション
捕手は、12球団どこも不足しがちなポジションです。
加えて、捕手はチーム戦術や投手情報を多く抱えるため、放出されにくいという事情もあります。
特に、若くて一軍経験があり、まだ伸びしろもあるような捕手が、市場に出ることはほとんどありません。
その意味で、今回の人的補償は、「本来なら獲得が難しい選手を、制度上のチャンスで手に入れた」とも言えます。
なぜDeNAは古市尊を選んだのか
DeNAの視点に立つと、今回の指名意図は明確です。
それは、将来的なリスクに対しての予防と、松尾世代以降までを見据えた長期的な編成設計です。
古市は、「今すぐレギュラー」ではないものの、「数年後に戦力になっていてほしい」というゾーンにぴたりと当てはまる選手です。
人的補償という限られた選択肢の中で、最も希少価値の高いピースを選んだ。
それが、今回の捕手指名だったと考えられます。
2026年ドラフトにも影響
古市を獲得したことは今年のドラフトにも影響を及ぼしそうです。
何故ドラフトに?と思う方もいるかと思いますが、現状のDeNAの捕手状況を考えると、今年のドラフトで捕手を指名する可能性は高くなっていました。
前述の通り、DeNAの2軍捕手は1軍経験が少ないので、1軍捕手に何かあった時にすぐ昇格して守備に就ける捕手がいません。
2軍では守っているため物理的には可能ですが、安心して任せられるとは言えないでしょう。
なので守備が良く、いざという時に1軍で起用できるような大学生または社会人捕手は補強ポイントでした。
しかし古市がちょうど補強ポイントに当てはまり、ドラフトで指名したい捕手を現時点で獲得できたことになります。
こうなるとドラフトで捕手指名の優先度は下がり、その分他のポジションをしっかり指名できるようになります。