プロ野球は、なぜ守備指標通りに評価されないのか
──現場が「エラーの少なさ」を最優先する理由

守備指標は進化した一方で、「数値通りに評価されない守備」が今も存在します。
なぜ現場は、守備範囲や肩の強さよりも「エラーの少なさ」を重視するのでしょうか。データと現場評価のズレを、守備の優先順位という視点から整理します。
ハマノンタン 2026.02.25
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プロ野球の守備評価は、近年大きく進化しています。

守備率、守備範囲、送球の安定感、アウトへの貢献度など、かつては感覚で語られていた要素が、現在ではUZRをはじめとした指標によって数値化されるようになりました。

一方で、「指標上は優秀なのにレギュラーに定着しない」「指標があまり良くないのに、何故あの選手はレギュラーなのか?」といったケースも少なくありません。

なぜ、守備は指標通りに評価されないことがあるのでしょうか。

本記事では、現場が守備をどう見ているのかという視点から、その理由を整理します。

守備は一つの能力ではなく、複数要素の集合体

まず前提として、守備は単一の能力ではありません。

  • エラーしにくさ

  • 守備範囲

  • 送球の強さ

  • 送球の正確性

  • 判断の速さ

UZRはこれらを総合的に評価する指標ですが、現場が常に「総合点」だけで守備を見ているわけではない点が重要です。

現場が最優先するのは「失点を増やさないこと」

現場評価において、守備で最も重視されるのは余計な失点を生まないことです。

エラーは、

  • 本来アウトになるはずの打者を生かす

  • 投手の球数を増やす

  • 守備全体のリズムを崩す

といった形で、失点期待値を一気に高めます。

一方で、守備範囲がやや狭くてもミスが少ないなら、届かなかった場合でもこちらもミスとして認識せず「ヒット1本」と同じ扱いをする場合があります。

このため現場では、

「まずエラーをしないこと」

→「その上で守備が上手いこと」

という評価順が自然と形成されます。

ポジションごとに異なる「守備で最優先されるもの」

守備評価が指標通りに現場で反映されにくい理由の一つが、ポジションごとに守備の優先順位が異なる点です。

同じ守備力でも、どの能力が最重要視されるかは守る場所によって変わります。

ショートは「エラーをしないこと」が最優先

ショートは内野の中心で、守備範囲が広いため処理回数が多く、しかも難易度が高いポジションです。

シーズン通してエラー0を達成したショートは歴代でもいません。

そのため、エラーの多い少ないが分かりやすいです。守備範囲や強肩以上に、確実にアウトを取る安定性が求められます。

難しい打球に挑戦してアウトを取れる能力があっても、送球ミスや捕球ミスが出やすい場合、その1プレーが即失点や大量失点につながりかねません。

現場では、「アウトを取れる打球を確実に処理できること」がまず基本で、その上で守備範囲や送球の巧さをプラスアルファとして見ているのでしょう。

セカンドは機動力と連携が重視される

セカンドはショートに比べ、送球距離が短く、体勢を崩した送球も少なくなります。

そのため、

  • 動き出しの速さ

  • 守備範囲

  • ダブルプレー時の連携

といった要素が評価されやすく、多少の送球不安があっても起用されるケースがあります。

ショートではリスクになる要素が、セカンドでは許容される場合があるのです。

外野では「ミスをしないこと」と「止める判断」が重要

外野守備では、内野ほど打球が飛んでこないためエラーが発生しにくく、求められる守備が異なります。

外野守備では

  • 打球音への反応速度

  • 長打を防ぐための足の速さ

  • 中継選手への素早い送球

などが重要になります。

内野手とは求められるものが大分変わり、巧さよりも身体能力を活かしやすいです。

守備範囲が広い選手ほど、リスクも増える

守備範囲が広い選手ほど、難しい打球に挑戦する機会が増えます。

これは指標上ではプラスに働きやすい一方で、体勢が崩れた中での送球や無理なプレーが増え、失敗した際のミスが目立ちやすいという側面もあります。

特に内野では、一つのエラーが試合の流れを大きく変えてしまいます。

守備範囲が広いことは決して悪くはないのですが、守備が粗いと余計に「エラーしやすい選手」と認識されやすいです。

このため現場は、「成功時のプラス」よりも「失敗時のマイナス」を重く見がちです。

ケーススタディ:森敬斗

DeNAの森敬斗選手は、俊足・強肩で守備範囲や送球速度は高く評価されてきました。

一方で、送球ミスや処理の不安定さが目立つ時期もあり、次第にショート固定ではなく、セカンドや外野で起用されるようになってきました。

これはショートというポジションで最優先される「安定性」とのバランスが、現時点では合致しなかったと見るべきでしょう。

逆に外野では森敬斗の足の速さや肩の強さを発揮しやすいため、ショートに拘らないことは、森敬斗の持ち味を活かすという意味も込められているでしょう。

守備率から分かる実際のエラーの頻度

ショートはエラーが少ないことが大事と述べてきましたが、どれだけエラーしやすいかを判断するには守備率から読み解けます。

ショートは1試合あたりの守備機会が大体4〜5回なので、これから何試合に1回エラーがあるか計算できます。

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