誤審がなくなる日は来るのか?ロボット審判と人間の未来
【1】なぜ今、誤審が問題になるのか
プロ野球の試合では、一つの判定が試合の流れを大きく左右する場面が少なくありません。
近年では特に、SNSの普及によって審判の判定が即座に拡散され、ファンの批判が可視化されるようになりました。
「これは明らかにアウトでは?」「スローで見たらセーフだろう」という声がリアルタイムで上がり、誤審に対する社会的圧力はかつてないほど強まっています。
NPBでもリクエスト制度が導入され、監督が異議を唱えることで映像判定が行われる仕組みになりました。
しかし、リクエストの判定においても“ジャッジを下した審判自身”がモニターで確認しているため、どうしても判定のバイアスがかかるのではないかという不信感は拭えません。
実際、リクエストによって判定が覆らないケースの中には、明らかに「映像と違う」と思えるものも存在します。
直近では5/30の中日ーヤクルト戦で、中日の川越選手が放った右翼ポール際への打球がファール判定されました。これに対して中日側がリクエストを要望しましたが、判定は覆りませんでした。
しかし映像を見ると本塁打のようにも見え、中日の井上監督が猛抗議し、試合後にNPBに対して意見書(抗議文)を送る事態にまで発展しました。
このようにリクエスト制度があるにもかかわらず、ファンが納得できない判定が続けば、審判への信頼はさらに損なわれていくでしょう。
【2】誤審はなぜなくならないのか
審判もまた人間であり、どれだけ熟練していても完全無欠の判断は不可能です。
特にプロ野球の試合では、動きの速さ、プレーの複雑さ、選手との距離など、瞬時の判断を要求される場面が多々あります。しかも選手の技術やポテンシャルの上昇とともに判断が難しくなってきます。
今回のファール判定だけでなく、たとえば、二遊間での併殺プレー、タッチプレーの際のミリ単位のタイミング、フェンス際の捕球判定などは、どんな角度から見ても分かりづらいものです。
さらに、審判のポジショニングや視界の妨げによって、実際のプレーを完全に視認できないことも多いのです。
そして映像判定の限界もあります。
リクエストではスロー映像が使われますが、すべてのカメラアングルが理想的とは限りません。
また、カメラの解像度やスロー性能によっても見え方は変わってきます。
結局のところ、「見えないものは判断できない」という現実があるのです。
【3】日本の審判にはあまりにも負荷がかかりすぎていた
日本の審判は長らく「判定が絶対である」という立場にありました。
これは対戦している選手や両首脳陣に対してだけでなく、審判自身においても課せられてきました。
なので審判が見えなかったプレーにおいても判定を下さなければならず「見えなかったので分かりません」などとは絶対に言えなかったのです。
これは審判自身にも相当な重圧になっていたことでしょう。
リクエスト制度の導入で判定が変わるようになったのは、選手や両首脳陣たちだけでなく、審判にとっても判定の重圧を軽減することに繋がりました。
しかしまだリクエスト制度でもまだ誤審が出てしまうため、これを改善していく必要があります。
では、誤審を本当に減らすにはどうすればいいのでしょうか?
ここからは、ロボット審判の実情や導入の可能性、そして未来の審判制度のあるべき姿について、深掘りしていきます。