今から育成モードは本当に正解なのか──首位と8ゲーム差でもDeNAが勝負を捨てられない理由
交流戦を終え6/19終了時点で、DeNAは首位と8ゲーム差の4位。
厳しい状況であることは間違いありません。
そのためファンの間では、
「もう優勝は無理ではないか」
「若手育成に切り替えてほしい」
という声も見られるようになりました。
しかし、本当に今すぐ育成モードへ移行するべきなのでしょうか。
実はプロ野球の現場は、ファンが思うほど簡単に「育成優先」へ切り替えられるものではありません。
今回はなぜ1軍が育成の場になりにくいのか、そして今のDeNAが置かれている状況について考えてみます。
首位と8ゲーム差は本当に絶望的なのか
まず前提として確認したいのは、シーズンはまだ終わっていないということです。
6/19終了時点で、DeNAにはまだ78試合残されています。もちろん、現在の位置からの優勝確率は高くありません。
しかし残り試合数を考えれば、まだ十分逆転可能な位置でもあります。
実際、プロ野球では後半戦に大型連勝を作って順位を大きく上げた例も少なくありません。
特に今年のセ・リーグは各球団とも決定的な強さを見せているわけではなく、混戦状態が続いています。
現場から見れば、「まだ諦める理由はない」というのが自然な考え方でしょう。
そもそも1軍は育成の場所ではない
ファンがよく言う「若手を使って育てろ」という意見。
気持ちはよく分かります。
しかし本来の1軍は育成機関ではありません。
1軍の使命は勝つことです。
もちろん若手を育てることも重要ですが、それはあくまで勝利を目指す過程で行われるものです。
育成を最優先にするのであれば、本来は2軍やファームがその役割を担います。
プロ野球の組織は、2軍で育成して1軍で戦力として使う、という分業が基本です。
その境界線を曖昧にすると、チーム全体が中途半端になってしまいます。
若手は1軍に上げれば育つわけではない
ここはファンが誤解しやすい部分です。
「1軍経験を積ませれば育つ」
と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。
むしろ実力が足りない段階で1軍に上げると、打てない、守れない、自信を失う、課題だけが増えるというケースも少なくありません。
特に野手の場合、2軍で結果を残していることと、 1軍で戦力になることの間には大きな壁があります。
実際、過去を振り返っても「育成目的で1軍に固定したら大成功した」という例はそれほど多くありません。
多くの主力選手は、2軍で十分な準備を整えた上で1軍に定着しています。
若手にも成功体験が必要
育成で重要なのは出場数だけではありません。
成功体験です。
例えば、自分の武器が通用した、課題を克服できた、役割を果たせた、という経験が積み重なって成長していきます。
その準備が整っていない状態で1軍へ送り込んでも、失敗体験ばかり積み重なる可能性があります。
これは育成ではなく消耗です。
2軍で成功体験が少ない内に1軍に行っても、失敗体験を積み重ねるだけで却って自信を無くしてしまう可能性もあるということです。
現場が慎重になる理由もここにあります。
現場は「来年」より「今日」が大事
ファンは今年が駄目でも、来年に期待すれば良いと気持ちを切り替えることができます。
しかし現場の監督、コーチや選手たちにとっては今年1年の重みが全然違います。
今年が駄目でも、来季の契約が約束されている人はそんなに多くありません。
結果を出さないと来年が「無い」人もいます。
また、今季の成績で来季の年俸が決まりますし、「あとは育成だから」と言われて簡単に納得できる人は、選手だけでなく首脳陣でもあまりいないでしょう。
なので目の前の試合で勝つこと、少しでも良い結果を残すことが必須なのです。
しかも首位と8ゲーム差。
苦しいとはいえ、まだ優勝可能性が残っています。
そんな状況で、「将来のために勝利を捨てましょう」という判断は現実的には非常に難しいでしょう。
現場が簡単に育成モードへ移行できないのは、当然とも言えます。
若手起用と育成モードは別物
ここで誤解してはいけないのは、若手を使うなという話ではありません。
むしろ若手の起用は必要です。
ただし重要なのは、「育成のために使う」のではなく、「戦力として使う」ことです。
例えば度会隆輝や勝又温史が評価されているのは、年齢が若いからではありません。
現時点で1軍戦力になっているからです。
本当にチームを強くする育成とは、2軍で準備を整えた選手が1軍で戦力になるサイクルを作ることです。
単に若い選手を並べることではありません。
ここまでは、なぜ1軍が簡単に育成の場にならないのかを整理してきました。
では実際にDeNAは若手育成を軽視しているのでしょうか。
SNSでは
「DeNAは若手が育たない」
「もっと若手を使うべきだ」
という声も見かけます。
しかし私はむしろ逆だと思っています。
DeNAは近年、球界でもかなり積極的に育成環境へ投資している球団の一つです。
ここからは、DeNAの育成環境と育成哲学について掘り下げていきます。