AIを使っているのに勝てない?──DeNAへの批判が見落としているAIの本当の役割
「DeNAはAIを活用しているのに、なぜ同じ打者に何度も打たれるのか。」
そんな意見をSNSで見かけることがあります。
AIという言葉には、「最適な答えを導き出してくれる万能な技術」というイメージを持つ人も少なくありません。
しかし、実際にAIを活用している立場からすると、その考え方には少し誤解があるように感じます。
今回は、野球と私自身の記事執筆を例に、AIにできることと、できないことについて考えてみます。
AIは「答え」ではなく「判断材料」を示す
現在、多くのプロ野球球団がAIやデータ分析を活用しています。
打者がどのコースを得意としているのか、どの球種に弱いのか、どのカウントで積極的に振ってくるのか。こうした膨大なデータを整理・分析することは、AIが得意とする分野です。
しかし、ここで勘違いしてはいけないのは、AIが示しているのは「答え」ではなく「判断材料」だということです。
「この打者にはこの攻め方が有効かもしれない」という可能性を示してくれるのであって、勝利を保証してくれるわけではありません。
相手の弱点が分かっても、実行できなければ意味はない
例えばAIが、
「この打者は球速150km以上のインコース高めのストレートが苦手」
と分析したとします。
しかし、その指定された球速とコントロールの球を投手が投げれなければ、その情報は活かせません。
つまりAIの分析に対して、投手の力量が追いついていないことになります。
さらに、野球は相手も同じように研究しています。
弱点とされるコースは克服しようと練習しますし、投手も毎回思い通りのボールを投げられるわけではありません。
体調や疲労、風向き、試合展開、プレッシャーなど、試合には数多くの不確定要素があります。
つまり、分析と実行はまったく別の能力です。
AIは分析できますが、ボールを投げることはできません。
最後に勝敗を左右するのは、選手自身の技術なのです。
なぜAIに過度な期待をしてしまうのか
それでも「AIを使っているのだから勝てるはず」と考える人は少なくありません。
その理由の一つは、「AI」という言葉が持つイメージでしょう。
将棋やチェスではAIが人間を上回る実績を残し、自動運転や画像生成なども大きな話題になっています。
そのため、「AIなら何でも解決してくれる」という印象だけが先行しやすいのです。
また、「AI導入」というニュースは目にしても、そのAIが具体的に何をしているのかまで報じられることは多くありません。
だからこそ、「AIを使っているのに勝てない」という期待外れの評価につながってしまうのでしょう。
AIは万能だから期待されているのではなく、万能だと思われているから過度な期待を受けているのです。
AIは導入すれば成果が出るものではない
AIは導入しただけで成果が出るものでもありません。
まずデータを集め、それを分析し、現場へ共有し、選手が実践し、その結果をまた分析して改善する。
この積み重ねがあって初めてAIは力を発揮します。
もしAIを導入した翌日から勝てるようになるなら、全球団がAIを導入した時点で同じように勝ち始めているはずです。
しかし現実はそうではありません。
AIはチームを強くする「特効薬」ではなく、地道な積み重ねを支える道具なのです。
ここまでは、AIに対して誤解されやすい点について考えてきました。
では、実際にAIを日常的に活用している人は、AIをどのように使っているのでしょうか。
私自身、記事執筆では毎日のようにAIを活用しています。
その経験を通して感じた「AIでできること」「AIではできないこと」、そして野球との共通点について、以降のパートで詳しくお話しします。