DeNAは今年、ショートを最優先しなくていい――宮下朝陽・成瀬脩人が変えたドラフト戦略
ここ数年、DeNAのドラフトを考えるうえで、ショートは常に重要な補強ポイントの一つでした。
毎年のように遊撃を守れる選手を指名し、それもドラフト中位を使って獲得してきました。それだけ球団が「将来のショート」を探し続けてきたということでしょう。
しかし2026年のドラフトでは、その状況が大きく変わったように思います。
最大の理由は、昨年のドラフトで指名した宮下朝陽と成瀬脩人です。
宮下朝陽が埋めた「ショートの穴」
今季のDeNAで最も多くショートの守備に就いたのは、ルーキーの宮下でした。
4月に一軍へ昇格すると、その後徐々に出場機会を増やし、最終的には遊撃でチーム最多となる60試合に出場しています。
しかも、ただ守備機会を与えられただけではありません。
71試合に出場して打率.258、8本塁打、26打点。守備でも遊撃60試合で安定して守り、ルーキーながら攻守両面で一軍戦力になりました。
これまでDeNAはショートについて、「守備は良いが打撃が物足りない」「打撃を期待すると守備面に課題がある」といった形で、なかなかレギュラーを固定できない時期が続いてきました。
もちろん宮下はまだ1年目です。
来季以降も同じように結果を残せる保証はありませんし、これでショートのレギュラーが完全に決まったと考えるのは早いでしょう。
それでも、22歳のルーキーが一軍でこれだけの出場機会を得て、攻守ともに結果を残した意味は非常に大きいです。
少なくとも「即戦力のショートをドラフト上位で獲得しなければならない」という状況ではなくなりました。
宮下が離脱しても成瀬が出てきた
さらに大きかったのが、宮下が離脱した後です。
宮下は9月14日の巨人戦で負傷し、翌15日に出場選手登録を抹消されました。
そこで一軍に昇格したのが、同じく昨年のドラフトで5位指名された成瀬脩人でした。
成瀬はその後ショートでスタメン起用され、持ち味である安定した守備を見せるだけでなく、打撃でも結果を残しています。
10月3日時点で一軍27試合に出場して打率.262。遊撃では9試合に出場して好守を見せる場面がありました。
宮下がシーズンを通して一軍で結果を残し、その宮下が離脱したところで今度は成瀬が出てきた。
これは編成を考えるうえでかなり大きな出来事だったのではないでしょうか。
一人の若手が台頭しただけなら、その選手が故障したり不調になったりした時に再びショートが補強ポイントになります。
しかしDeNAの場合、昨年のドラフトで獲得した2人がともに一軍のショートとしてプレーできるところまで来ました。
一度のドラフトで、ショートの選択肢を一気に二人増やすことができたとも言えます。
林琢真、石上泰輝もまだ20代
そしてDeNAには宮下、成瀬だけがいるわけではありません。
今季一軍では京田陽太が遊撃で34試合、林琢真と石上泰輝もそれぞれ30試合に出場しています。
京田は中堅の立場になっていますが、林、石上はまだ20代です。
宮下、成瀬を加えれば、一軍でショートを守ることのできる20代の内野手が複数いることになります。
さらにファームにも田内真翔、加藤響らがいて今後の若手育成面でも揃っています。
誰か一人を「絶対的なショート」に決める必要はありません。
宮下を中心にしながら成瀬、林、石上らを競わせ、その中から数年後のレギュラーが決まっていけばいい。
現在のDeNAには、そう考えることのできる選手層ができつつあります。
DeNAは5年間、ショートを取り続けてきた
ここで改めて過去のドラフトを振り返ると、DeNAがどれだけショート候補の獲得を重視してきたのかが分かります。
2021年には高校生の粟飯原龍之介を3位、2022年には大学生の林琢真を3位、2023年には大学生の石上泰輝を4位で指名しました。
2024年には独立リーグの加藤響を3位、高校生の田内真翔を5位で指名。田内について球団は指名時から「将来遊撃手のレギュラーとして期待できる」と評価していました。
そして2025年には宮下を3位、成瀬を5位で指名しています。
高校、大学、社会人、独立リーグ。
カテゴリーを問わず、DeNAはさまざまなタイプの内野手を獲得してきました。
しかも育成やドラフト最下位でとりあえず人数を増やしたというわけではありません。
3位、4位といった比較的高い順位を何度もショート候補に使っています。
つまり、ここ数年のDeNAにとって「将来ショートを任せられる選手を見つける」というのは、それだけ優先順位の高い編成課題だったのでしょう。
その積み重ねの中から、ようやく宮下と成瀬が一軍で結果を残し始めました。
今年は「ショートだから取る」必要がない
だからこそ、今年のドラフトでは考え方を変えていいと思います。
もちろん、ショートを一人も指名する必要がないという意味ではありません。
例えば高校生の中に将来性を高く評価しているショートがいるのであれば、数年後を見据えて指名するのは十分に考えられます。
また、アマチュアではショートを守っていても、プロではセカンド、サード、外野など別のポジションで起用することを前提に、打撃や身体能力を評価して指名するケースもあるでしょう。
アマチュアでショートを守れる身体能力の高さ自体は、ドラフト候補として大きな魅力です。
ただし、それは「ショートが足りないから取る」という指名ではありません。
現在のDeNAの編成を見る限り、即戦力ショートを上位で確保する必要性はかなり低くなっています。
もし遊撃手を指名するとしても、他の補強ポイントとの兼ね合いを考えれば、下位や育成を中心に検討できるポジションになったのではないでしょうか。
ショートに使っていた上位指名を他へ回せる
これは今年のドラフト戦略全体を考えるうえでも重要です。
これまでDeNAは、ショート候補を獲得するために3位や4位といった貴重な指名順位を使ってきました。
しかし今年、その枠を必ずしもショートに使う必要はありません。
先発投手、リリーフ、センターを守れる外野手など、現在の編成で優先度の高い別のポジションへ指名順位を振り分けることができます。
ドラフトでは、すべての補強ポイントを一度に埋めることはできません。
だからこそ、「今年は取らなくても大丈夫」と判断できるポジションが一つ増えることには大きな意味があります。
2021年の粟飯原から始まり、林、石上、加藤、田内、そして宮下、成瀬。
DeNAが何年もかけて続けてきたショート候補への投資が、ようやく一軍の戦力として形になり始めています。
そして宮下と成瀬の台頭によって、今年は久しぶりに「ショートをどうするか」をドラフトの中心に置かなくてもいい年になりました。
ショートを取らないこと自体が重要なのではありません。
ショートを無理に取りにいかなくても、他の補強ポイントを優先できるようになった。
それこそが、宮下朝陽と成瀬脩人が今季残した結果の、ドラフト戦略における最大の価値なのではないでしょうか。
では、ショートの優先度が下がったことで、今年のDeNAはその分の上位指名をどこに使えるのでしょうか。
ここからは、特に重要になりそうな2位・3位指名に注目しながら、今年のドラフト戦略をもう一段具体的に考えてみます。