育成選手には本当に“実戦経験”が足りないのか──DeNAが3軍制を選ばない理由を考える
出場機会の少なさや3軍制の必要性が語られる中で、DeNAが近年選んでいる育成方針から、選手を育てるために本当に必要なものを考えます。
育成選手について語られる際、よく聞かれるのが「もっと試合に出した方がいい」という意見です。
支配下選手が優先される二軍では、育成選手になかなか出場機会が回ってきません。それなら3軍を作り、育成選手にも数多く実戦経験を積ませるべきではないか。
確かに、一理ある考え方です。
実際、今季限りでDeNAを退団することになった小笠原蒼や近藤大雅も、二軍公式戦で多くの打席を与えられたわけではありません。
ほとんど試合に出ないまま戦力外になるのであれば、「もう少しチャンスを与えてもよかったのではないか」「試合に出せないなら3軍があった方がいいのではないか」と感じる人がいるのも理解できます。
ただ、本当に育成選手に必要なのは、単純に“試合数を増やすこと”なのでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと思っています。
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「試合に出ること」と「育成されること」は同じではない
野球選手が成長するうえで、実戦経験が重要なのは間違いありません。
実際の投手との対戦でしか分からないこともありますし、試合の中で守備位置につき、走者となり、状況判断を経験することにも意味があります。
ただし、実戦はあくまで育成の一つの手段です。
試合に出れば、それだけで選手が成長するわけではありません。
特に育成契約で入団する選手の場合、まずプロ野球選手として戦うための土台を作る必要があります。
身体を大きくする。筋力をつける。スイングを作る。守備の基本動作を身につける。投手ならフォームを整え、球速や制球力、変化球を磨く。
そうした課題を一つずつクリアしたうえで、初めて実戦で成果を確認する段階に入ります。
逆に言えば、まだ練習段階で明確な課題が残っている選手を、ただ試合に出し続ければいいとは限りません。
打撃フォームに課題がある状態で100打席立たせても、結果を残せないまま打席だけを消化する可能性があります。
それならば、試合に出る時間を使ってフォームを作り直し、身体を鍛え、まず「試合に出してみたい」と思わせる状態まで引き上げる方が重要な場合もあるでしょう。
小笠原蒼と近藤大雅は「試合に出られなかった」のか
小笠原や近藤についても、「出場機会が少なかった」という部分だけを見ると、十分なチャンスを与えられなかったようにも見えます。
しかし同時に考えなければならないのが、限られた出場機会の中でどこまで結果を残せていたかです。
少なくとも二軍公式戦で、さらに多くの出場機会を与えたくなるような結果を残していたとは言い難い状況でした。
もちろん、これは「結果を残せなかったから能力がなかった」という話ではありません。
若い選手ですし、数十打席程度の結果だけで将来性まで判断することはできません。
ただ、二軍にも数多くの選手がいます。
支配下登録を目指す育成選手だけでなく、一軍昇格を争う若手選手、故障から復帰してきた選手、一軍で結果を残せず再調整している選手も試合出場を必要とします。
そうした中で出場機会を増やすためには、練習や少ない実戦機会の中で「もっと見たい」と首脳陣に思わせることも必要になります。
つまり、「試合に出られなかったから結果を残せなかった」だけではなく、
「結果を残せる段階まで成長できなかったため、試合出場も増えなかった」
という可能性も考えなければなりません。
では3軍を作れば解決するのか
そこで出てくるのが3軍制です。
二軍公式戦とは別に実戦の場を作れば、育成選手にも多くの打席や登板機会を与えることができます。
これは3軍制の明確なメリットでしょう。
二軍では出番の少ない選手を試合に出せますし、多くの育成選手を保有し、その中から時間をかけて選手を育てることもできます。
一方で、3軍を持つことにもコストがあります。
単純な金銭面だけではありません。
試合を行えば、そこには移動があります。試合前の準備があります。試合後にはリカバリーも必要になります。
当然、練習時間との兼ね合いも発生します。
選手にとって現在最も必要なのが、打席数を増やすことなら3軍戦は有効でしょう。
しかし、身体づくりに時間をかけるべき選手、フォームを作り直している選手、基礎的な守備練習を繰り返す必要がある選手まで頻繁に試合へ出すことが、本当に最善なのかは分かりません。
実戦経験を与えること自体が目的になってしまえば、本末転倒です。
大切なのは「何試合出たか」ではなく、その選手が成長するために今何が必要なのかです。
ではDeNA自身は、育成選手の実戦機会についてどう考えているのでしょうか。
近年の選手保有の変化を見ていくと、球団が目指している方向性が少しずつ見えてきます。