【NPB】人的補償撤廃へ?浮上した「ドラフト指名権」案は本当にFAを活性化できるのか

人的補償撤廃へ向けた議論が進む中、代替案として浮上した「ドラフト指名権」制度。しかし本当に制度を変えるだけでFA市場は活性化するのでしょうか。そのメリットと課題を整理します。
ハマノンタン 2026.05.23
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NPBで人的補償制度の撤廃が本格的に議論され始めています。

代替案として浮上しているのは、FA移籍で選手を失った球団に翌年、ドラフトの指名権を与える新制度です。

しかしこの制度はまだ決定したわけではなく、その中身で複数案が出ています。

現在報道されている案は、大きく分けて2つあります。

1つは「ドラフト特別指名権」を与える案

もう1つは「ドラフト指名権を譲渡」する案です。

人的補償制度は以前から賛否が続いてきましたが、これら新制度にもメリットだけでなく課題があります。

本記事では今回浮上している制度案を整理しながら、本当にFA活性化につながるのか考えていきます。

人的補償見直しで浮上した「2つの案」

今回の議論で注目されているのは、大きく2つの制度案です。

①ドラフト特別指名権案

これはFA移籍で選手を失った球団へ、翌年ドラフトで追加指名権を与えるものです。

イメージすると以下のような形になります。

通常は1位指名終了後に2位指名へ移りますが、新制度では1位指名終了後に「FA流出球団の特別指名」を挟み、その後2位指名が始まる流れです。

いわゆる「1.5位指名」のような形です。

Aランク・Bランクによって指名順位は調整されるとみられています。

②ドラフト指名権譲渡案

もう一つは、FA選手を獲得した球団が、自身の翌年ドラフト指名権を移籍元球団へ譲渡する方式です。

イメージすると、巨人がAランク選手を獲得→巨人の翌年ドラフト指名権を移籍元球団へ譲渡という形になります。

こちらはMLBなどでも見られる補償制度に近い考え方です。

どちらも一見すると合理的に見えますが、それぞれ課題も存在します。

人的補償は以前から問題点が指摘されていた

人的補償制度は以前から選手会が撤廃を求めていました。

大きな理由は心理的負担です。

「自分が移籍したことで、別の選手がチームを去るかもしれない」

そう考えると、FA宣言自体のハードルが上がる可能性があります。

さらに近年は別の問題も指摘されていました。

若手有望株よりベテラン選手が対象になりやすいことや、育成契約が事実上の抜け道として利用されるケースです。

本来は戦力補償制度ですが、理想通りに機能していない部分もありました。

ドラフト指名権案のメリット

今回のドラフト指名権案は2案とも、一定の合理性があります。

まず、人的補償のように移籍によって別の選手がチームを去るケースがなくなります。

そのためFA宣言する選手の心理的負担は軽くなる可能性があります。

また獲得球団側も28人のプロテクトを考える必要がなくなります。

FA市場への参入ハードルは下がるでしょう。

少なくとも「需要」を喚起する効果は期待できそうです。

ドラフト特別指名権案の課題

ただし、どちらの制度にも見逃せない課題があります。

まずドラフト特別指名権案の方では、以下の課題が大きいです。

第三者球団にも影響が出る

例えばDeNAがFA選手を失い、特別指名権を得たとします。

すると、本来2位で指名する予定だった他球団の順位は後ろへずれます。

つまり影響を受けるのはFA獲得球団と流出球団だけではありません。

何の関係もない第三者球団にも不利益が及ぶ可能性があります。

ドラフトでは順位が1つ違うだけでも、獲得できる選手は大きく変わります。

特に2位付近は「1位級が残るゾーン」でもあり、この影響は小さくありません。

ドラフト指名権譲渡案にも課題がある

一方で、ドラフト指名権譲渡案にも問題があります。

例えば極端な例ですが、巨人がオフにAランク選手を2球団からそれぞれ1人ずつ獲得したケースを考えてみます。

すると巨人は2つの指名権を譲渡しなければいけません。

仮に、

球団A → 巨人の2位指名権

球団B → 巨人の3位指名権

となった場合、補償内容に大きな差が生まれます。

同じAランク選手を失ったにもかかわらず、受け取る補償価値が全く違ってしまいます。

ドラフトでは1位と2位、2位と3位でも大きな差があります。

さらに、

「誰が1位指名権を受け取るのか」

「契約順なのか」

「年俸順なのか」

「成績順なのか」

など新たな問題も発生します。

制度をシンプルにしたつもりが、別の不公平を生む可能性があります。

また、どちらの案でも大きな課題となるのが補償のタイミングです。

人的補償なら翌シーズンから即戦力を獲得できる可能性があります。

しかしドラフト指名権の場合、実際に選手が加入するのは翌シーズン以降になります。

さらに高卒選手なら育成期間も必要です。

つまり主力が抜けた穴を短期間で埋めにくくなります。

優勝争いしている球団ほど、この影響は大きくなりそうです。

今回の制度変更には一定の合理性があります。

ただ、人的補償だけがFA市場停滞の原因と考えるのは早計です。

ここまでは制度の整理と問題点を見てきました。

ただ、本当に重要なのは「人的補償をなくせばFAは活性化するのか」という点です。

個人的には、問題は補償制度だけではなく、NPB全体の編成構造にもあるように感じています。

この先では、FA市場が動きにくい本当の理由は何か?と、上記2案よりも良いと思える代替案まで踏み込んでいきます。

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