試合時間短縮だけではない──ピッチクロック導入で変わるプロ野球
「試合時間が短くなるだけ」と思われがちなルールですが、その影響は想像以上に大きいかもしれません。
今回は、ピッチクロック導入によって日本プロ野球がどう変わるのか、そしてDeNAにはどのような影響があるのかを考えてみます。
日本プロ野球選手会は臨時大会を開き、来季からピッチクロックを導入する方向で合意しました。
選手アンケートでも賛成が多数を占め、今後はNPBとの協議を経て、制限時間や運用方法などの詳細が決まっていく予定です。
また、自動投球判定システム(ABS)やピッチコムについても導入へ向けた検討が進められており、日本野球はここ数年で大きな転換期を迎えようとしています。
その中でも最も試合へ直接影響を与えそうなのが、今回のピッチクロックです。
ピッチクロックとは何か
ピッチクロックとは、投手が一定時間以内に投球しなければならないルールです。
MLBでは2023年から本格導入され、
- 投手は制限時間内に投球
- 打者も一定時間までに打席へ入る
- 違反するとボールやストライクが宣告される
という形で運用されています。
試合中に時計が表示され、時間がゼロになる前に投球動作へ入らなければなりません。
日本でも細かな秒数は今後決まりますが、基本的にはMLBを参考にしたルールになる可能性が高いでしょう。
なぜ今導入されるのか
目的として最も大きいのは、試合時間の短縮です。
近年はNPBで短縮に向けた取り組みを行ってきましたが、それでも平均3時間を切ったシーズンはありません。また、長くなれば1試合3時間半を超えるケースも珍しくありません。
試合時間が短くなれば、現地観戦やテレビ観戦もしやすくなり、ファンの負担軽減にもつながります。
もう一つ大きな理由が、国際大会への対応です。
WBCをはじめ、国際大会ではすでにピッチクロックが採用されています。
国内リーグでも同じルールでプレーできるようになれば、日本代表へ選ばれた選手も戸惑うことなく大会へ入れるようになります。
さらに、選手会長の近藤健介選手が「選手の負担軽減にもつながる」と話したように、試合全体のテンポ改善という意味でも期待されています。
夏の酷暑対策としても有効と言えるでしょう。
MLBではどんな変化が起きたのか
MLBではピッチクロック導入後、平均試合時間が大幅に短縮されました。
導入前(2022年)に3時間4分だった9イニングの平均試合時間が、導入初年度(2023年)には約2時間40分と、約24分短縮されました。
一方で、得点が極端に減ったり、野球そのものが別競技になったりしたわけではありません。
最初は戸惑う選手も多くいましたが、シーズンが進むにつれて適応し、現在では当たり前のルールとして定着しています。
つまり、最初の数か月こそ影響はあるものの、多くの選手はやがて対応できると考えられます。
ここまではピッチクロック導入の背景や制度について整理してきました。
では実際に、このルールはチームの戦い方や選手の評価にどのような変化をもたらすのでしょうか。
特にDeNAのようなデータ活用を重視する球団にとっては、単なる試合時間短縮以上の意味を持つ可能性があります。
ここからは、ピッチクロック時代の野球について考察していきます。
得をするチーム、苦しむチーム
ピッチクロックが導入されると、すべてのチームが同じ条件で戦うことになります。
しかし、その影響は決して一律ではありません。
もともとテンポ良く投げる投手は影響を受けにくいでしょう。
一方で、毎球間を取ってリズムを作るタイプの投手は、投球フォームや配球を見直す必要が出てくるかもしれません。
また、捕手やベンチにも変化があります。
サイン交換の時間が限られるため、事前準備や情報共有の精度がこれまで以上に重要になります。
単純な技術だけでなく、「どれだけ効率よく試合を進められるか」が勝敗を左右する時代になる可能性があります。