セ・リーグは「投高打低」から変わるか──昨季後半の得点増とテラス導入が示すもの
2026年のプロ野球は、ここ数年続いてきた「投高打低」の流れが変わるのかどうかに注目が集まっています。
特にセ・リーグは平均得点が減少傾向にあり、得点が入りにくい状況が続いてきました。
リーグ平均得点の推移は以下の通りです。
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2020年 4.11点
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2021年 3.77点
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2022年 3.63点
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2023年 3.51点
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2024年 3.22点
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2025年 3.21点
減少傾向が続いていますが、2024→2025年に関しては微減で、数字だけを見ると減少に歯止めがかかった、と言えそうです。
ただし2025年は、年間平均だけでは実態が見えにくいシーズンでもありました。前半と後半で得点環境が大きく変化しているためです。
1. 2025年は「前半が異常」「後半で戻った」シーズンだった
2025年の得点を前半・後半で分けると、以下のようになります。
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3〜6月:2.94点
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7〜10月:3.48点
前半は歴代でも最低水準と言えるほど得点が伸びず、1点を守り切る試合が極端に増えました。
一方で後半は一転して得点が増え、2023年に近い水準まで上昇しています。
つまり2025年は、年間を通して同じ傾向だったわけではなく、前半と後半で景色がまったく違ったシーズンでした。
2026年は、この後半の流れを引き継ぐのかどうかが、大きな焦点になります。
2. なぜ投高打低が続いているのか(投手側の進化)
近年の投高打低は、単なる「打者不振」だけでは説明しきれない部分があります。
背景には投手側の進化がはっきり存在します。
投手と打者の対戦は、基本的に「投手側が新しい武器を手に入れ、それに打者が対応していく」という構図になりやすいです。
球速アップはもちろん、変化球の質や制球力の向上、投球術の洗練、そしてリリーフ分業の高度化など、得点を奪う側にとっては難易度が上がる要素が揃ってきました。
終盤の勝負どころで150キロ台後半を投げる投手が次々に出てくる現代野球では、打者が一打で流れを変えること自体が難しくなっています。
また守備やデータ活用の精度が上がったことで、「ヒット性の当たりがアウトになる」場面も増えています。
投手が抑えるだけでなく、守る側の完成度も得点を減らす方向に働いているのが近年の特徴です。
打者視点ではこれらの急激な変化に対応しきれてない可能性があり、それが得点減少へと繋がっているのかもしれません。
3. 2025年後半に得点が増えた意味
一方で、2025年後半に得点が増えたことは「投高打低が永遠に続くわけではない」ことも示しています。
投手側のレベルが急に落ちたというよりは、打者側やチーム側が少しずつ適応し、対策が進んだと見る方が自然です。
特に本塁打数は6月までの前半で220本でしたが、後半では323本になっており、芯で捉える技術の向上や、振り切る打撃の取り組みが結果を出してきたと言えます。
早いカウントから強く振り切る打撃への回帰、狙い球を絞るアプローチ、盗塁や進塁打を絡めた得点パターンの再構築など、攻撃側が工夫できる余地はまだ残っています。
この「後半の回復」が2026年も続くなら、リーグ全体の平均得点は少し上向く可能性があります。
逆に、再び前半のような水準に落ち込むなら、投高打低はまだ強く残っていると判断できるでしょう。
4. エンタメとしては“もう少し点が入る”ほうが楽しみやすい
ロースコアゲームは緊張感があり、投手戦が好きなファンにとっては魅力でもあります。
ただ、シーズン全体が極端な低得点に振れすぎると、試合展開が単調に感じられる場面が増えるのも事実です。
プロ野球は勝負の世界であると同時に興行でもあります。
ホームランや長打、逆転劇といった分かりやすい盛り上がりは、ライト層を含めて幅広いファンにとっての入口になりやすい要素です。
その意味では、エンタメとしてはもう少し点が入りやすい環境のほうが、多くの層にとって楽しみやすいという考え方も成り立ちます。
5. 極端な投高打低が続くなら、NPB側の対策も論点になる
もし2026年も、平均得点が2点台に沈むような状況が続くなら、NPB側も極端な投高打低への対策を検討すべき段階に入るかもしれません。
ボールの反発係数に関しては「基準値内」と公表していますし、投手の進化そのものは競技レベルの向上であり、否定されるものではありません。
ただ、リーグ全体の得点が長期的に下がり続け、攻撃面の魅力が伝わりにくくなると、競技としてのバランスは議論の対象になります。
環境調整は非常に難しいテーマですが、「投手有利に傾きすぎない」状態を保つことは、長期的に見れば競技の魅力を維持することにもつながります。