なぜ高校時代に指名しなかったのか?──高校生ドラフトを結果論で語れない理由

「あの選手を高校時代に獲っておけば…」
ドラフトのたびに繰り返されるこの議論。しかし、活躍した未来を知った上で過去の判断を批判するのは簡単です。高校生指名の難しさと、本当に指名すべき選手とはどんな存在なのか。ドラフトの本質に迫ります。
ハマノンタン 2026.06.22
サポートメンバー限定

大学生や社会人の有力ドラフト候補が現れるたびに、ファンの間ではこんな声を見かけます。

「なぜ高校時代に指名しなかったのか」

「スカウトの見る目がなかったのではないか」

確かに後から見ればそう思える選手は少なくありません。

しかし、それは本当に正しい見方なのでしょうか。

高校生の将来を予測することは決して簡単ではありません。

また、大学や社会人を経由したからこそ成長できた選手も数多く存在します。

今回はドラフトでよく語られる「高校時代に獲るべきだった」という意見について考えてみます。

結果が出た後だから言えること

大学生や社会人で大きく成長した選手を見ると、

「高校時代に獲っておけば良かった」

という声が出ます。

しかし、その多くは結果を知った後だからこそ言える話です。

高校生の時点では将来の成長を正確に予測することはできません。

体格が大きく変わる選手もいます。

フォーム改造で化ける選手もいます。

大学や社会人で優秀な指導者と出会い、一気に才能が開花するケースもあります。

逆に高校時代はドラフト上位候補だった選手が、故障や伸び悩みで期待通りのキャリアを歩めないことも珍しくありません。

ドラフトは未来予知ではありません。

各球団はその時点で得られる情報をもとに判断しているのです。

全ての有望株を指名することはできない

仮に将来有望な高校生を見つけたとしても、全員を獲得することはできません。

ドラフトで指名できる人数には限りがあります。

球団には毎年、

  • 先発投手が不足している

  • 内野手を補強したい

  • 捕手の層を厚くしたい

といったチーム事情があります。

高校生の将来性だけを重視して指名していれば、目の前の戦力補強ができなくなります。

ドラフトは単なる才能発掘ではなく、チーム編成そのものです。

後から活躍した選手だけを見て、「なぜ獲らなかったのか」と語るのは簡単です。

しかし、その裏には指名されなかった多くの有望株が存在しています。

活躍した選手だけを切り取って評価するのは公平ではありません。

大学や社会人を経由したからこそ伸びた可能性

見落とされがちなのがこの視点です。

その選手は本当に18歳でプロ入りした方が成功したのでしょうか。

大学や社会人で数年間プレーする中で、

  • 身体作り

  • 技術向上

  • 精神的成長

を経験したからこそ現在の姿になった可能性もあります。

近年は大学野球や社会人野球の育成環境も大きく向上しています。

プロだけが成長の場ではありません。

もし高校卒業直後にプロ入りしていたら、現在と同じ選手になっていた保証はないのです。

選手本人にとってもメリットがある

ファンはどうしても球団目線で考えがちです。

しかし人生を歩むのは選手本人です。

大学卒業や社会人経験は、引退後の人生において大きな財産になります。

プロ野球選手の現役生活は決して長くありません。

学歴や社会経験、人脈を得た上でプロ入りすることには大きな意味があります。

高校卒業と同時にプロ入りすることだけが正解とは限らないのです。

高卒指名には育成コストが伴う

さらに見逃せないのが球団側のコストです。

ファンからすると、「有望ならとりあえず獲っておけばいい」と思えるかもしれません。

しかし実際にはそう簡単ではありません。

高校生を獲得するということは、その後数年間にわたって育成する責任を負うことでもあります。

年俸や設備費だけではありません。

コーチの指導時間、寮や施設の利用、トレーニング環境など様々なコストが発生します。

そして何より重要なのが出場機会です。

出場機会も有限な資源

近年は育成選手の増加によって、ファームの出場機会そのものが貴重になっています。

打席数も投球回も無限ではありません。

将来性のある高校生を大量に獲得したとしても、全員に十分な実戦経験を積ませることは難しくなります。

育成とは選手を集めることではなく、成長できる環境を与えることです。

環境を用意できないまま獲得するのであれば、それは選手にとっても不幸な結果になりかねません。

大学や社会人は「育成機関」でもある

少し極端な言い方をすれば、大学野球や社会人野球は球団にとって外部の育成機関でもあります。

大学や社会人で4〜7年間プレーする間に、

  • 身体が完成する

  • 技術が向上する

  • 実戦経験を積む

ことができます。

しかもその育成コストは大学や企業が負担しています。

球団から見れば、「育成コストをかけずに成長した選手を獲得できる」という側面もあります。

もちろん高卒で獲得して育てる魅力はあります。

しかし育成環境や出場機会が十分でないのであれば、大学や社会人を経由した方が結果的に選手にとっても球団にとってもプラスになる場合があります。

ここまで、「なぜ高校時代に指名しなかったのか」という結果論の危険性について考えてきました。

では逆に、球団はどんな高校生を指名するべきなのでしょうか。

以降のパートでは、

  • どんな高校生なら指名すべきなのか

  • 出場機会と育成環境の重要性

  • 長所と課題が明確な選手の強み

  • 「良い選手」ではなく「育てられる選手」を探すという考え方

について掘り下げていきます。

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、1140文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

サポートメンバー限定
試合時間短縮だけではない──ピッチクロック導入で変わるプロ野球
サポートメンバー限定
松尾汐恩は本当に盗塁を刺せないのか──「盗塁阻止率=捕手の能力」ではな...
サポートメンバー限定
シーズン途中補強はなぜ難しいのか──ビド炎上から考える外国人投手の現実...
サポートメンバー限定
新制度の試金石になるか──DeNAが挑む「2勝アドバンテージ」の壁
サポートメンバー限定
なぜDeNAは育成外国人を獲得しなくなったのか──マルセリーノが背負う...
サポートメンバー限定
投げる度に成長する──トレードで獲得した尾形崇斗がDeNAで開花した理...
サポートメンバー限定
優勝を目指すのか、来季を見据えるのか──DeNA後半戦で問われる「勝利...
サポートメンバー限定
補強期限は終わった──それでも期待したいDeNA育成選手たちの未来