「フロント介入はない」で終わらない──高田繁と南場智子が語ったDeNAの責任と支える組織
DeNAという球団は、いったい誰がどこまで決めているのか。
この問いは、ベイスターズファンの間で長年繰り返されてきました。
スタメンは誰が決めているのか。継投は本当に監督だけの判断なのか。フロントやデータ部門が選手起用にまで関与しているのではないか。
特に結果が出ない時期になると、「フロント主導」という言葉と結びつきながら、さまざまな憶測が語られてきました。
しかし今回、村瀬秀信さんによる高田繁さんと南場智子オーナーの対談で、DeNAという球団が考えている「フロント」と「現場」の境界線が、これまでにないほど明確に語られています。
ここで示されたのは、単に「フロントは采配に介入していない」という話だけではありません。
むしろ重要なのは、
誰が何に責任を持つのか。
そして責任を持つ人間を、組織としてどう支えるのか。
というDeNAの組織作りそのものではないでしょうか。
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「フロント主導」の意味が初めてここまで明確になった
今回の対談でもっとも印象的だったのが、高田さんの言葉です。
高田さんはDeNA初代GMとして、現在まで続く球団作りの基礎を作った人物です。
その高田さんが、「フロント主導」とはチーム作りまでであり、現場では監督が責任者として判断するものだという趣旨を明確に語りました。
GM時代には、高田さん自身も試合を見ながら、
「なぜあの投手を替えないんだ」
「なぜあの選手を代打に出すんだ」
と思うことがあったといいます。
それでも、それを現場には言わなかった。
GMやフロントが「あの選手を使え」と言い始めれば、現場の指揮系統が崩れてしまうからです。
これはかなり重要な証言でしょう。
DeNAについて語られてきた「フロント主導」という言葉は、いつしか「フロントが試合の選手起用まで決めている」という意味にまで広げて解釈されることがありました。
しかし高田さんが説明しているものは、まったく違います。
ドラフト、補強、育成、組織編成など、監督の在任期間を超えて続いていくチーム作りについては球団が主体となる。
一方で、実際の試合で誰をスタメンにするのか、どこで投手を交代するのか、誰を代打で送るのかについては、監督を中心とした現場が判断する。
つまり、
「球団作りはフロント主導、試合は現場主導」
という役割分担です。
これなら監督が交代するたびに球団全体の方向性が変わることもありません。
ラミレス監督から三浦監督、そして相川監督へと指揮官が替わっても、DeNAという球団として積み上げてきたものは継続できる。
南場オーナーも、監督が替わるたびに球団の考え方や体制まで変わってしまえば何も積み上がらない、という趣旨の話をしています。
ここにDeNAの組織作りの根本的な考え方があるのでしょう。
では采配が悪ければ、すべて相川監督の責任なのか
今回の対談を受けて、
「フロントが介入していないなら、采配が悪いのは全部相川監督の責任ということだ」
という反応も見られます。
確かに、試合の采配について最終的な責任者が監督であることは、今回の発言からもかなり明確になりました。
そこを曖昧にしている組織ではない、ということなのでしょう。
しかし、今回の高田さんと南場オーナーの話を「だから監督が悪い」という結論だけに使ってしまうと、対談で語られているもう半分の重要な部分を落としてしまいます。
南場オーナーが繰り返し語っているのは、監督という仕事は孤独だということです。
監督は試合の責任を負います。
勝てば評価され、負ければ批判される。
スタメン、継投、代打など、毎日のように結果を問われます。
だからこそ、その監督を一人にしてはいけない。
南場オーナーはラミレス、三浦、そして相川についても、監督を支えるという観点から、最初からもっと意識してあげられればよかったという趣旨の振り返りをしています。
高田さんも、自分と野球観の合う人間を身近に置き、いつでも話ができる環境の重要性を語っています。
これはかなり示唆的です。
DeNAは、
「監督に権限を与えるから、あとは一人で責任を取ってください」
という組織を目指しているわけではない。
むしろ、
「監督に現場の権限と責任を持ってもらう。そのうえで、監督が孤立しないよう組織として支える」
という考え方なのでしょう。
責任を明確にすることと、責任者を孤立させることは同じではありません。
今回の対談で非常に重要なのは、そこだと思います。
木村社長を守るための対談だったのか
もう一つ、この対談について
「最近フロント批判が強くなっているから、木村洋太球団社長を擁護するためにこういう話を出したのではないか」
という見方もあります。
実際、高田さんは木村社長が「フロントが采配に介入している」と受け取られている状況について、かなり強い言葉で否定しています。
南場オーナーも、木村社長はそのようなことを言っていないと明言しています。
その部分だけを切り取れば、「木村社長擁護」に見えるのも分からなくはありません。
ただ、対談全体を読むと、語られているテーマはもっと広いものです。
高田さんは自分がGMだった時代についても、同じ原則で現場には口を出さなかったと説明しています。
南場オーナーも木村社長だけではなく、ラミレス、三浦、相川と歴代監督をどう支えてきたのか、そしてどう支えるべきだったのかを振り返っています。
つまりこれは、
「木村社長は悪くない」
という一個人の弁護というより、
「DeNAという組織では、そもそもどこまでをフロントが担い、どこからを監督が担うのか」
を説明している話として読む方が自然でしょう。
木村社長についての誤解を解きたいという思いが高田さんにあること自体は、発言からも読み取れます。
しかし、それだけを目的にした話ではありません。
初代GMと現オーナーがそれぞれの経験から、球団経営における役割分担について語った結果として、現在の木村社長への見方にも話が及んだ、と考える方が対談全体の文脈には合っています。
