「本来ならなかったスタメン」で3ラン──井上朋也が“巡ってきた一日”を次のチャンスに変えた
9月9日のヤクルト戦。
DeNAのスタメンには、「8番・ライト」で井上朋也の名前がありました。
そして、その井上が巡ってきたチャンスを見事にものにしました。
第1打席でDeNA移籍後初安打を放つと、第3打席ではチームのリードを大きく広げる3ランホームラン。
5月に山本祐大とのトレードで尾形崇斗とともにDeNAへ加入してから約4か月。ファームで結果を積み重ねて一軍昇格をつかみ、ようやく一軍の舞台でも大きな結果を残しました。
もちろん、移籍後初本塁打を打ったこと自体も大きなニュースです。
ただ、この日の井上について考えると、それ以上に興味深いのが、そもそもこのスタメン出場自体が、いくつもの条件が重なって生まれたものだったということです。
※無料読者登録すると、DeNAの戦力分析・ドラフト・球団運営などの新着記事をメールで受け取れます。
本来ならなかったかもしれない「8番・ライト」
この日、本来であればライトではエンカーナシオンのスタメン出場が考えられていました。
しかし、エンカーナシオンがコンディション不良でベンチ入りを外れることになります。
さらに相手先発は左腕の山野。
左投手を得意としている右打者をスタメンに加えたい状況も重なり、井上に出場機会が巡ってきました。
「8番・ライト、井上朋也」
いくつもの条件が重ならなければ、もしかすると生まれていなかったスタメンだったかもしれません。
しかし、プロ野球ではこうした偶然に近い巡り合わせから、選手の立場が大きく変わることがあります。
そして井上は、そのチャンスを逃しませんでした。
第1打席で移籍後初安打。
さらに第3打席では、チームの勝利を大きく引き寄せる3ランホームラン。
ただスタメンで起用されただけではなく、「次も使ってみたい」と思わせるだけの結果を一日で残しました。
偶然だけではつかめないチャンス
もちろん、この日のスタメンが巡ってきたことには偶然の要素があります。
しかし、そこで結果を出せたことまで偶然だったとは言えません。
井上はDeNA移籍後、ファームで圧倒的とも言える打撃成績を残してきました。
なかなか一軍で出番を得られなくても、二軍で打ち続ける。
その結果として一軍昇格をつかみ、そしてようやくスタメンの機会まで巡ってきました。
仮にファームで結果を残していなければ、今回エンカーナシオンが欠場したとしても、井上がその代役として選ばれていたとは限りません。
チャンスそのものは偶然生まれることがあります。
しかし、その候補になるためには日々の積み重ねが必要です。
そして実際にチャンスが巡ってきたとき、それを次へとつなげられるかどうかは選手自身にかかっています。
井上は今回、その両方をクリアしました。
定位置がなかったからこそ守ってきた多くのポジション
そして、もう一つこの日のスタメンにつながったと考えられるのが、井上がこれまで経験してきた守備位置の多さです。
井上はソフトバンク時代から、一塁、三塁、左翼、右翼、さらには中堅まで、さまざまなポジションで起用されてきました。
ただ、これは単純に「どこでも守れる万能型だった」と捉えるのは少し違うでしょう。
もともとのメインポジションだった三塁ではエラーが多く、守備をなかなか安定させることができませんでした。
そのため一塁や左翼で起用され、さらに右翼、中堅と守る場所を広げてきた経緯があります。
言い換えれば、
一つのポジションで定位置をつかめなかったからこそ、さまざまな場所を守ってきた
とも言えます。
選手としては、決して理想的な形だったわけではないでしょう。
しかし、その経験が結果として今回の出場機会につながった可能性があります。
もし井上が一塁しか守れない選手であれば、この日のスタメンはなかったかもしれません。
佐野恵太がいる一塁では、そう簡単に出場機会を得ることはできません。
しかし、「ライトでも起用できる」という選択肢があった。
上手いとは言えなかったとしても、実際に守った経験がある。
そこに「左投手相手に右打者を入れたい」という条件も重なりました。
これまで定位置をつかめなかったからこそ身につけてきた経験が、DeNAでは一軍で出場するための武器へ変わり始めているのかもしれません。
こうして結果を出すことができた井上朋也ですが、この一発により今後の起用はどう変わるのか、そして来季の起用やレギュラー定着への道を、以降のパートでさらに深く考察してみました。