なぜベテランは必要なのか──松尾汐恩の突然の離脱を救った戸柱恭孝
8月12日、DeNAファンの間に一時衝撃が走りました。
松尾汐恩の一軍登録抹消が発表されたためです。
今季は山本祐大がトレードで移籍後、一番手捕手として起用されてきた松尾。
その松尾が突然、登録抹消名簿に載ったことで「故障なのか」「長期離脱になってしまうのか」と心配したファンも多かったのではないでしょうか。
ただし、今回の抹消はNPB感染症特例によるものでした。
具体的な症状については発表されていませんが、通常の登録抹消とは扱いが異なり、一軍復帰もしやすいものと考えられます。
なのでまずはしっかり回復し、再び一軍へ戻ってくることを待ちたいところです。
一方で、チームは松尾が戻ってくるまで試合を止めることはできません。
そして松尾が突然離脱した8月12日の試合で「今日の先発・東克樹を誰が受けるのか?」という話題になりました。
今季の東は松尾とバッテリーを組んできました。
松尾が問題なく出場できる状態であれば、この日も東―松尾のバッテリーになることを想定して準備していたでしょう。
その松尾が突然出場できなくなったことで、急きょスタメンマスクを任されたのが、36歳のベテラン・戸柱恭孝でした。
そして結果的に、この急造バッテリーが素晴らしい投球を生み出しました。
東は8回を投げてわずか1失点。
内容を見ても、今季の東自身の登板の中で1、2を争うと言っていいほどのベストピッチングでした。
突然バッテリーが変更されたにもかかわらず、何とか試合を作ったわけではありません。
むしろ今季最高クラスの投球を披露したのです。
この試合には、「なぜチームにベテランが必要なのか」が凝縮されていたように思えます。
若手が台頭すれば、ベテランの出番は減っていく
今季のDeNAでは山本祐大をトレードしたことで、松尾が一番手捕手として起用されていました。
これはチームにとって非常に大きなことです。
若い松尾が一軍で経験を積みながら結果を残し、正捕手として成長していく。
将来を考えれば理想的な流れでしょう。
一方で、それによって出場機会が減る選手もいます。
その一人が戸柱です。
若手がレギュラーをつかめば、ベテランの出番が減る。
これは世代交代を進めていくうえで避けられません。
すると、
「松尾がこれだけ出られるなら戸柱は必要なのか」
「控えにも若い捕手を置いた方が将来につながるのではないか」
という考え方も出てくるでしょう。
確かに、何事もなくシーズンが進むのであれば、それでもいいのかもしれません。
しかし143試合を戦うシーズンでは、何も起きないということはまずありません。
故障する選手もいます。
体調を崩す選手もいます。
不調に陥る選手もいます。
今回のように、前日まで普通に出場していた主力選手が、突然試合に出られなくなることだってあります。
そんな緊急事態でこそ、ベテランの存在価値が表れるのです。
ここまでは、緊急時にこそベテランの力が必要という話を中心に進めてきました。
では今回、松尾が突然離脱した中で、戸柱はなぜ東とのバッテリーを問題なく成立させることができたのでしょうか。
そして、今回の一戦から見えてくる「控えのベテラン」にしか果たせない役割とは何なのでしょうか。
ここからは、戸柱の働きを掘り下げながら、数字だけでは見えにくいベテランの価値について考えていきます。