DeNAは本当に「高卒投手の育成が苦手」なのか──織田翔希のドラフト候補浮上で考える
この夏の甲子園で、大きな注目を集めている投手がいます。
横浜高校の織田翔希投手です。
8月10日に行われた沖縄尚学との1回戦では、8回2/3を投げて被安打6、12奪三振、2失点の好投。昨夏の甲子園を制した強豪を相手に見事な投球を披露し、チームを勝利へ導きました。
もともとドラフト候補として高い評価を受けている投手ですが、横浜高校の選手ということもあり、DeNAファンの間でも「ドラフトで指名するのではないか」と注目されています。
この試合ではDeNAの木村球団社長も視察に訪れており、球団側の関心の高さもうかがえます。
一方で、DeNAが織田を指名する可能性について語られる際、気になる意見もあります。
「DeNAは高卒投手を育てるのが苦手なのだから、織田を指名しても育てられないのではないか」
「現在のチーム状況を考えれば、高校生ではなく即戦力の大学生、社会人投手を取った方がいい」
確かに、これまでのDeNAのドラフトを振り返ると、高卒投手から絶対的なエースを育て上げた例はほとんどありません。
しかし、本当にDeNAは「高卒投手の育成が苦手な球団」なのでしょうか。
織田を指名するべきかどうかとは一度切り離して、今回はDeNAの高卒投手育成について考えてみたいと思います。
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「高卒投手が育っていない」のは事実
まず、これまでDeNAが指名した高校生投手を振り返れば、「十分に育っている」とは言いにくいところがあります。
その代表的な存在が小園健太でしょう。
2021年ドラフト1位で市和歌山高から入団。
高校時代から世代を代表する投手として評価され、DeNAも阪神との競合の末に交渉権を獲得しました。
当時の三浦監督が現役時代につけていた背番号「18」が渡されましたし、当然ながら将来の先発ローテーション、さらにはエース候補として期待された投手です。
しかし、現在まで一軍の主力投手にはなれていません。
小園以外にも、京山将弥、阪口皓亮、松本隆之介など、ドラフト4位までの比較的高い順位で高校生投手を指名してきましたが、長期間一軍の先発ローテーションを守った投手はいません。
こうした結果だけを並べれば、
「DeNAは高卒投手を育てられない」
という印象を持つのも理解できます。
ただ、ここで一つ考える必要があります。
「一軍の主力にならなかった」という結果と、「球団の育成が悪かった」という原因は同じなのでしょうか。
小園健太だけを見て「育成失敗」と言えるのか
特に考えたいのが小園です。
ドラフト1位で獲得した高校生投手がなかなか一軍戦力になれていない。
これだけを見ると、球団の育成に問題があったようにも見えます。
しかし、小園が指名された2021年ドラフトの高校生投手を見てみると、少し違った景色が見えてきます。
この年は高校生投手の評価が非常に高く、小園だけでなく風間球打、森木大智、達孝太などがドラフト1位で指名されました。
その後を見ると、風間や森木も期待されたような一軍戦力にはなれませんでした。
一方で日本ハムの達は一軍で結果を残しています。
もちろん達という成功例がある以上、「この世代の高校生投手は誰も育たなかった」とすることもできません。
ただ、小園だけが伸び悩んでいるわけではないことも事実です。
高校時代に高く評価された投手であっても、その後順調に成長するとは限りません。
特に高校生は、大学生や社会人と比べてプロ入り後に成長する余地が大きい一方、将来の予測も難しくなります。
小園が一軍の主力になれていないという一例だけをもって、
「DeNAはドラフト1位の高校生投手すら育てられない」
と結論付けるのは、少し早いのではないでしょうか。
他の高卒投手も本当にすべて「育成失敗」なのか
それ以外の投手についても、一人ずつ見ていく必要があります。
例えば松本隆之介。
素材として非常に期待されていましたが、プロ入り後は故障に悩まされ、育成の過程そのものが予定通りに進まなかった部分があります。
故障によって十分な実戦経験を積めなかった選手について、単純に「球団が育てられなかった」と評価するのは難しいでしょう。
阪口皓亮はDeNAでは一軍に定着できませんでしたが、ヤクルトへ移籍してからはリリーフで一軍戦力として起用されています。
京山将弥に関しても期待されたほど大成しなかった、という評価自体は否定できませんが、それでも一軍で10試合以上先発したシーズンがあり、キャリア終盤には短期間ながらリリーフとして結果を残した時期もありました。
もちろん、これらをもって「DeNAの高卒投手育成は成功している」と主張するつもりはありません。
ただ、
「エースになったり、ローテ入りすることができなかった=育成失敗」
としてしまうと、選手育成をあまりにも成功か失敗かの二択で考えることになります。
プロ野球のドラフトでは、指名された選手の全員が一軍の主力になれるわけではありません。
まして高校生投手なら、完成までに時間がかかります。
故障することもあれば、想定したほど球速が伸びないこともあります。
先発として期待されていた投手がリリーフに適性を見いだすケースもあります。
そう考えると、DeNAの高卒投手については「成功例が少ない」という評価はできても、それをそのまま「育成が下手」と置き換えることには慎重になる必要があります。
ここまで見てきたように、DeNAから高卒投手の成功例が多く出ていないこと自体は事実です。
ただ、それだけで「DeNAは高卒投手の育成が苦手」と結論づけるには、もう一つ重要な視点が抜けています。
それは、そもそもDeNAがこれまで、どれだけ上位指名で高校生投手を獲得してきたのかということです。
成功例の「人数」だけではなく、その前提となる「母数」まで見ていくと、DeNAの高卒投手育成には少し違った見方ができるようになります。
そして現在は、深沢鳳介という新たな成功例になり得る投手も出てきました。
ここからは、過去のドラフト指名と現在の育成状況を踏まえながら、DeNAは本当に高卒投手の育成が苦手なのか、そして織田翔希をドラフト候補としてどう考えるべきなのかを掘り下げていきます。