石田裕太郎は“次のエース”になれるか──120イニング到達、数字で見る成長と残された課題
石田裕太郎が、今季120イニングに到達しました。
9月25日の阪神戦終了時点で、20試合すべてに先発して120.2回。防御率2.91、K/9は8.73、BB/9は2.16、QS率は65.0%となっています。
5勝8敗と勝ち星には恵まれていませんが、内容を見ればその数字以上の投球を続けてきたと言えるでしょう。
DeNAの日本人先発で120イニング以上を投げたのは、東克樹を除けば2023年の今永昇太以来です。
ここまで来ると、石田裕を単なる「若手の先発」「ローテーション候補」と見る段階は、もう過ぎたのかもしれません。
今季の数字が示しているのは、東に続く先発の柱、準エース級と呼べるところまで成長してきた姿です。
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120イニングを投げたこと自体に大きな価値がある
まず評価したいのが、120.2回という投球回です。
先発投手の価値は、防御率や勝利数だけで決まるものではありません。
年間を通してローテーションに入り、安定して登板しながら多くのイニングを消化することも、チームにとって非常に大きな意味を持ちます。
特に近年のDeNAでは、東が多くのイニングを担ってきた一方、その次に続く日本人先発が年間120イニング以上を投げるシーズンはなかなかありませんでした。
そのラインまで石田裕が到達しました。
しかも、今季は故障による離脱期間もあります。
決してシーズンを通して順調に投げ続けられたわけではない中で、それでも120イニングを超えました。
20先発で120.2回ですから、1試合平均では約6イニングです。
登板数だけを積み重ねたのではなく、先発として一定の長さを投げながら到達した数字であることにも価値があります。
QS率65%が示す「試合を作れる先発」への成長
石田裕の安定感を分かりやすく表しているのが、QS率65.0%です。
20先発のうち13試合でQSを記録しています。
およそ3試合に2試合は、6イニング以上を投げて自責点3以下に抑えている計算です。
先発投手にとって重要なのは、毎回完璧に抑えることではありません。
調子が良くない日でも大崩れせず、試合を壊さない。
そして味方に勝つ可能性を残した状態でリリーフ陣へつなぐ。
そうした投球を年間を通して続けられることが、ローテーション投手には求められます。
今季の石田裕は、その部分で大きく成長しました。
「今日はどこまで持つだろうか」という投手ではなく、「まず6回前後までは試合を作ってくれる」と計算できる先発になりつつあります。
奪三振が多く、四球も少ない
内容面でさらに評価したいのが、奪三振と四球です。
石田裕はK/9が8.73、BB/9が2.16。
9イニングあたり9個近い三振を奪いながら、四球は2個程度に抑えています。
これは先発投手として非常に扱いやすい組み合わせです。
三振を取れる投手は、守備や打球の結果に左右されず、自分の力でアウトを増やせます。
一方で、奪三振能力が高くても四球が多ければ、球数が増えて長いイニングを投げにくくなります。
今季の石田裕は、その両方を高いレベルで両立しています。
防御率2.91という結果だけではなく、そこに至る内容にも大きな不安がありません。
今季の成績が偶然ではなく、投球内容に裏付けられたものであることが数字からも見えてきます。
今季の飛躍を支えている「シンカー」という最大の武器
では、なぜ石田裕はこれだけ三振を奪いながら、安定した投球を続けられているのでしょうか。
球種別データを見ると、その答えの一つがシンカーにあります。
今季の石田裕はストレートを約半数投げ、その次に多いのがシンカーです。
このシンカーが非常に強力です。
被打率は.196、空振り率は20.9%。
さらに、今季の奪三振117個のうち54個をシンカーで奪っています。
ストレートによる奪三振が55個ですから、投球割合ではストレートよりかなり少ないにもかかわらず、ほぼ同じ数の三振を奪っていることになります。
石田裕というと、140キロ台後半のストレートを中心に押していくイメージもあります。
しかし、現在の投球を支えている最大の武器の一つは、間違いなくこのシンカーでしょう。
ストレートを意識させながら、そこからシンカーで空振りを奪う。
この組み合わせが機能しているからこそ、高い奪三振率と安定した与四球率を両立できています。
特に左打者に対してシンカーの割合を増やしており、右投手でありながら左打者を苦にしていない点も興味深いところです。
単純に球速で押し切るのではなく、球種の組み合わせによって打者を打ち取れるようになったことが、先発としての安定感につながっています。
東に次ぐ「準エース級」と呼べるところまで来た
ここまで数字を並べると、石田裕の現在地も見えてきます。
120.2回、防御率2.91、QS率65.0%。
さらにK/9は8.73、BB/9は2.16です。
投球回、安定感、奪三振能力、制球力。
どれか一つだけではなく、先発投手に必要な要素を複数の面で高い水準にまとめています。
もちろん、東克樹は何年もローテーションの中心を担い続けてきた投手です。
現時点で石田裕を東と同じ立場として扱う必要はありません。
それでも、「東の次に誰を先発の軸として考えるか」という問いに対して、石田裕の名前を挙げられるところまでは来ています。
「準エース級」という表現が、現実味を持つところまで成長してきました。
それでも「エース」と呼ぶには、もう一段階上が必要
ただし、今季の成績だけで「すでにDeNAのエースになった」と評価するのはまだ早いでしょう。
特に、さらに高いレベルの安定感を求める余地があります。
石田裕のQS率は65.0%。
十分に高い数字ではありますが、セ・リーグの規定投球回到達者にはQS率70%台後半から80%台を記録している投手もいます。
リーグを代表する先発投手と比較すれば、まだ差があります。
さらに重要なのがHQSです。
QSが「6回以上・自責点3以下」であるのに対して、HQSは「7回以上・自責点2以下」。
先発としてもう1イニング長く、それでいて失点も少なく抑えなければ記録できません。
今季の石田裕は「6回まで試合を作る」能力はかなり高くなりました。
次に求められるのは、その6回を7回、8回へ伸ばすことです。
6回3失点で終える試合を、7回2失点に変える。
その試合が増えていけば、リリーフ陣の負担も減り、チームが勝てる確率もさらに高まります。
「試合を作れる先発」から「試合を長く支配できる先発」へ。
そこが、準エースからエースへ進むための次の段階でしょう。
ここまでは、石田裕太郎が今季どこまで成長したのかを見てきました。
では、ここから「準エース」ではなく、本当の意味でDeNAのエースになるためには何が必要なのでしょうか。
球種別データを見ると、最大の武器となったシンカーがある一方で、まだ伸ばせる部分もはっきりしています。
ここからは、石田裕に求めたい「第三の球種」、QS・HQSのさらなる向上、そしてCSから来季以降にかけて期待される役割まで掘り下げていきます。