ドラフト指名権ではFAは活性化しない?──人的補償に代わる新制度を考える
FA移籍に伴う「人的補償制度」を廃止し、新たな補償制度へ移行する議論が進められていましたが、今オフからの変更は見送られる見込みとなりました。
人的補償に代わる案として検討されていたのが、ドラフト指名権の譲渡です。
AランクのFA選手を獲得した場合はドラフト2位、Bランクなら3位の指名権を旧所属球団へ譲る、といった案が軸になっていたとされています。
人的補償では、FAを取得した本人とは関係のない選手が突然移籍することになります。
その問題を解消するという意味では、ドラフト指名権による補償には一定の合理性があります。
ただし、ドラフト上位指名権を失う負担が大きすぎれば、逆にFA選手を獲得する球団が減ってしまう可能性もあります。
人的補償には確かに問題があります。
一方で、なかなか決定的な代替案が出てこないのも、それだけ制度設計が難しいからでしょう。
今回は人的補償を廃止するとしたら、どのような制度が考えられるのかを考えてみます。
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人的補償は本当に「悪い制度」なのか
現在のFA制度では、A・Bランクの選手を獲得すると、旧所属球団は条件に応じて人的補償を求めることができます。
問題なのは、FA権を行使した本人とは別の選手が、自分の希望とは関係なく移籍する可能性があることです。
FAは長年プレーした選手が得る権利です。
その権利を別の選手が行使した結果、関係のない選手がチームを離れる。
これを問題視する声が出るのは理解できます。
ただし、本人が希望していない移籍というのは人的補償だけではありません。
プロ野球にはトレードがありますし、現在では現役ドラフトもあります。
人的補償で移籍する選手も、移籍先球団から「この選手を戦力として獲得したい」と評価された上で選ばれています。
突然の移籍による負担はありますが、別の見方をすれば必要とされて移籍するという側面もあります。
そのため、「本人が希望していない移籍だから人的補償は完全におかしい」と単純化するのも違うと思います。
人的補償特有の問題は、FA権を行使した本人とは別の選手が、その「補償」として移籍する構造にあるのでしょう。
代替案がなかなか決まらない理由
人的補償が長く残ってきたのは、主力を失った球団に即戦力となり得る選手を与えるという、分かりやすいメリットがあるからです。
FA選手を獲得した球団にも大きな負担をかけない。
それでいて流出球団にも十分な補償を与える。
これを同時に満たすのは簡単ではありません。
だからこそ人的補償には問題があると言われながらも、決定的な代替制度がなかなか見つからないのでしょう。
ドラフト2位を失うならFA補強を見送る球団も出てくる
そこで浮上したのがドラフト指名権による補償です。
選手が移籍しなくて済むため、一見すると合理的です。
しかしAランクで2位、Bランクで3位という条件はかなり重いと選手会は判断したのだと思われます。
ドラフト2位なら、将来何年も主力になれる可能性のある有望な若手を獲得できます。
その権利を失ってまで、30代のFA選手などを獲得するのか。
「良い選手だけれど、ドラフト2位まで失うなら見送ろう」
と判断する球団が出ても不思議ではありません。
人的補償をなくしてFA移籍をしやすくするはずが、別の補償によって獲得球団が減ってしまえば本末転倒です。
これによりドラフト指名権譲渡案が見送られました。
では、人的補償をなくしながら、FA移籍を阻害せず、流出した球団にも一定のメリットを与えるにはどうすればいいのでしょうか。
ここからは、ドラフト指名権の調整、金銭補償、外国人枠、さらにFA制度そのものの見直しまで、人的補償に代わるいくつかの方法を考えてみます。