DeNAは高卒投手を1位指名すべきか──小園健太、松本隆之介、深沢鳳介から考える「完成までの距離」
小園健太、松本隆之介、深沢鳳介の育成過程を比べながら、故障歴や伸びしろだけでは測れない、一軍投手になるまでの「完成までの距離」について考えます。
DeNAが今後のドラフトで、高校生投手を1位指名する可能性はあるでしょう。
将来的にエースになれる素材を高校生の段階で獲得し、じっくり育てていく。
長期的なチーム編成を考えれば、高卒投手の上位指名そのものを避ける必要はありません。
一方で、高校生投手を1位で指名するのであれば、球速や変化球、将来性だけではなく、これまで以上に重視したいポイントがあります。
それが「プロで投げ続けるための身体的な土台が、どこまで出来上がっているか」です。
DeNAが近年上位指名し、将来の先発として期待してきた小園健太と松本隆之介。
そして同じ高卒投手ながら、長期離脱を乗り越えて一軍戦力になりつつある深沢鳳介。
3人の育成過程を比べることで、今後DeNAがどのような高校生投手を狙うべきなのか考えてみたいと思います。
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小園健太は「身体づくり」から始まった
2021年ドラフト1位の小園健太は、市和歌山高時代から世代を代表する投手として高く評価されていました。
完成度の高い投球を見せ、高校生ながら阪神との競合になったことからも、その評価の高さが分かります。
ただ、プロ入り後の育成は、すぐに二軍のローテーションで投げ続けるような形にはなりませんでした。
入団後にDeNA側がまず取り組んだのは、身体づくりです。
小園は身長、体重だけを見れば決して小柄な投手ではありませんでした。
しかし実際には、身体の大きさに対して筋肉量が十分ではなく、プロの投手として継続的に力を発揮するには、まず身体そのものを強くする必要がありました。
そのため1年目は実戦登板を急がず、トレーニングや投球動作の習得に多くの時間を使っています。
これは決して悪い育成ではありません。
高校生投手なのですから、数年かけて身体を作ること自体は当然です。
ただ、ドラフト1位という観点で考えると一つ気になることがあります。
指名時に想定していた一軍先発までの育成工程が、入団後に増えたのではないかという点です。
ドラフト時点で球団がどこまで長期育成を想定していたかは分かりません。ただ結果として、小園はプロ入り後に身体づくりからスタートし、一軍先発になるまで多くの育成工程を必要としてきました。
筋力を備えさせ、その筋力をもとにフォームを組み立て、そして強いボールを安定して投げられるようにする。
さらに先発として100球前後を投げても、球威やコントロールを維持できるようにする。
一軍ローテーション投手になるまでには、こうした段階を一つずつクリアしなければなりません。
小園は現在も成長過程にありますし、今後一軍先発として定着する可能性は十分あります。
そのため「育成に失敗した」と判断するのは早いです。
ただし、高校時代には分かりにくかった身体面の課題によって、想定以上に長い育成期間が必要になっていることは、高卒投手を上位指名する際に考えておきたいポイントでしょう。
松本隆之介は故障歴がなくても育成計画が変わった
2020年ドラフト3位で入団した松本隆之介も、将来の先発候補として期待されていた高校生左腕です。
高校時代から190cm近い長身と角度のあるボールが魅力で、身体がさらに出来上がれば大きく伸びる素材と見られていました。
しかも松本の場合、ドラフト時には「故障がないこと」も評価材料の一つでした。
ここが非常に興味深いところです。
高校時代に大きな故障歴がなくても、プロ入り後の故障まで予測できるとは限らないからです。
松本はプロ1年目の2軍戦登板は5試合で、この登板数自体は珍しいことではないですが、登板した試合ではコントロールが大きく乱れて大炎上してしまいました。
打ち込まれてしまうのは高卒投手にありがちですが、コントロールがバラバラでまともにストライクが取れていなかったのは、誤算だったのではないでしょうか。
そしてプロ2年目には左肩の手術を受け、シーズンを実戦登板なしで終えました。
1年目から制球面で苦戦し、翌年には左肩の手術を受けた。この二つに直接的な因果関係があったかは分かりませんが、どちらにしても不測の事態であったと想定されます。
その後は復帰し、二軍で好成績を残して一軍登板も経験しましたが、さらに別の故障もあり、現在まで一直線に一軍先発へ定着するキャリアとはなっていません。
もちろん、これらすべてをドラフト時点で予測することは不可能です。
投手である以上、どれほど身体が強くても故障する可能性はあります。
だからこそ、ここから得られる教訓は、
「故障歴のある高校生を避ければいい」
という単純な話ではありません。
深沢鳳介は大きな故障をしても戻ってこられた
一方で、DeNAの高卒投手育成が成功に近づいている例として挙げたいのが深沢鳳介です。
深沢は2021年ドラフト5位で専大松戸高から入団しました。
小園と同期ですが、ドラフト順位は5位。身長177cmと投手として特別大きな体格でもなく、150キロを連発するようなタイプでもありません。
それでも、プロ入り後は比較的順調にステップを踏んでいきました。
1年目からファームで実戦登板を経験すると、2年目の2023年には二軍の先発ローテーションに定着。
18試合に登板して93回1/3を投げ、6勝6敗、防御率3.28。与四球も17個に抑えました。
まだ高卒2年目ながら、二軍で年間を通して先発として投げられるところまで進んでいたわけです。
しかし、その順調な育成は一度止まります。
2024年3月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、長期離脱となりました。
翌2025年は育成契約となり、リハビリを続けた末に6月に約1年半ぶりとなる実戦登板を果たします。その後もファームで登板を重ね、オフには再び支配下契約を勝ち取りました。
そして2026年。7月5日のヤクルト戦でプロ初勝利を挙げると、わずか2週間後の7月18日には9回103球、4安打無四球無失点。
プロ初完封勝利まで記録しました。
長いリハビリを経験した高卒投手が、一軍の先発として結果を残せるところまで戻ってきたのです。
小園、松本、深沢はいずれも、プロ入り後に決して平坦な道を歩んできたわけではありません。
では、大きな故障を経験しながらも一軍先発までたどり着いた深沢と、育成に時間を必要としている小園、松本には、どのような違いがあったのでしょうか。
ここからは3人の育成過程を比較しながら、DeNAが高卒投手を1位指名する際に重視したい「完成までの距離」について考えていきます。